Sweet Brissie life

ブリスベンでのサトウキビ博士研究生活の甘くない備忘録

読了メモ「国際貢献のウソ」

国際貢献のウソ(伊勢崎賢治ちくまプリマー新書)

 

本人の経験が強く伝わってくる一方で、客観性や説得力・全体のまとまりなんかにはイマイチという印象...でも納得させられる部分も多数。

 

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*第1章 NGOという貧困ビジネス

NGOなどの国際協力は貧困を商品としたスキマ産業(ドナーと被援助国を三角関係で結ぶ)仲介する2者の距離が離れている必要があり、また貧困を根本的に無くす変革は目指さない

外国資本の公共事業としての開発

農業・教育・衛生など同時進行で複数のプロジェクトが動くコミュニティ総合開発、欧米のトップ国際NGOでは国連プロジェクト並みの金が動く

外国資本に賄賂漬けにされ資源が国益にならない貧国、ローカルシステムの成功を積んで国策に、他方で現地政府との折り合いやNGO間のテリトリー・自主規制

経費率を下げる、リストラできるマネージャーこそ求められる、現地に技術も人材もあって必要なのはシステムづくりや組織化、現場のヒーローとしての日本人に固執して駆逐される日本NGO

当事者の問題と距離を置いて客観的に戦略策定できる、外国の寄付者にコンタクトをとり橋渡しできる、それが部外者としての強み

日本に寄付文化は厳しいし国際NGOが既に独占、日本進出に元官僚を理事に据える外国籍NGO、日本NGOアカウンタビリティーよりアントレプレナー

 

 

*第2章 国際協力ボランティアという隠れ蓑

有難迷惑になり得るボランティア、近場で共感能力の発揮される距離感、いつでもやめて元の生活に戻れる形であるべき

善意に基づいても自発性や無償性を維持するには制度化が必要、税金であれば国策、国際協力を聖域にしたいお上の戦略として機能するボランティア

現場主義や技術専門家にこだわって採算性や援助効果が追及されないJICA

賃金をもらえる青年海外協力隊や、危険な現場に短期間かつ低予算で有能な人材を供給する国連ボランティア、真にボランティアではない

国連正職員と待遇格差のある国連ボランティア、それでも正規採用を目指し多数応募、職務以外の組織的な縛り

持続性のための組織化・制度化、従属、そして組織維持がミッションに並ぶ目的となるが、そこで職能や無償や漬貧のイメージで国家・寄付にすがってはだめ、貧困という商品開発(People Tree, Cause Related Marketing)、NGOこそ営利を目指せ

 

 

*第3章 国連というジレンマ

有事に個人ではなく組織全体で責任を取る、保身に走る本部と裁量のなくなっていく現場、ルールを順守し縛られていく官僚文化

 費用対効果を考えない官僚組織である国連、緊急性の高い戦後復興などではNGO無しで機能しない

パシリとなってしまうNGO、自身の財源もあり下請けにはならないNGO

NGOが有事の際に国連の指示に従うべきかは原理的問題、対等なパートナーとして活動すべき?そのためには民間資金は直接NGO

拒否権を持つ常任理事国既得権益、あるいは各国の国益とリスクしだいで硬直化する国連(e.g.ルワンダの虐殺)

正義を犠牲にして成立する平和(シエラレオネ内戦)、一貫性はなくテロリストは殺し方や数では決まらない

保護する責任も内政不干渉の原則と衝突

予防する責任は二国間援助や地域共同体による介入に可能性

 

 

*第4章 ODAという無担保ローン

国益ありき(日本人の信頼、日本製品の付け届け)、国益を通じて見る世界益

ただし相手国国民へであり、相手国政府への賄賂になってはならない、一部の政治家・政権への借りになれば足元を見られる(TICADでの国連理事会のためのロビー活動)

ODAは戦後賠償から始まり、減額の引け目から援助内容が被援助国次第の要請主義、2003年にODA大綱が見直されるも以前甘い日本の主体的判断、ODAによる被援助国の金銭的余裕が軍事転用される危険性、ODAを減額し質的改革を

利益直結でない教育なら無償、将来的輸出による利益を見込んだ農業・漁業やエネルギーなど大規模事業は有償、とはならず融資基準に一貫性がなく政治的な有償援助、聖域化により貸し倒れに甘い

国連拠出は分担金で十分、説明責任を逃れるための任意拠出金はやめるべき

国際連帯税導入 

 

 

*第5章 自衛隊憲法9条

軍隊の兵力は財政と仮想敵次第だが、仮想敵への抑止力という大義名分は政治利用されやすい

自衛隊海外派遣は現場の軍事的ニーズではなく国内政局への実績目的

国連軍事監視、非武装への国際貢献 

愛国心と世界平和のための国際協力は両立する 

 

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一般的にNGOやあるいは国際協力そのものに非営利的な慈善活動のようなイメージを持たれがちだが(著者に言わせればそういう自己主張の自業自得)、そこはビジネスと割り切って、公に利益も追及するように取り掛かって良いのではないか(国際協力業界の方々は百も承知で隠れ蓑にしてるのかもしれないけれど)。それが社会に認められ支援されるような活動・広報にシフトすべきなような。

 

国際協力がある種の貧困ビジネスであると割り切ってしまえば、手段の目的化(ミッションに並ぶ組織維持)問題、慈善事業的イメージと費用対効果への甘さ、名ばかりボランティアの立ち位置などって、バサバサ切れるんじゃない?要は世界の所得再分配装置としての役割なんじゃないかね。

 

似たように、愛国心国益)と国際協力(世界益)は両立する、という考え方は(自分が迷いなく国際協力に貢献するためにも)重要だと感じた。

人間も環境・自然界の一部であり、そのために環境保全や持続性を掲げて努力するように、国際社会というシステムの一部としてシステム内での優位性とシステムそのものの存続を両立させることは、きわめて理に適った大儀だろう。

純粋に貧困を憂う、貧者を救いたいという強い動機を持たない自分にとっても掲げやすく、また結果的に救われることを願う姿勢を貫ける大儀かもしれない。