Sweet Brissie life

ブリスベンでのサトウキビ博士研究生活の甘くない備忘録

読了メモ「池上彰のアフリカビジネス入門」

池上彰のアフリカビジネス入門(池上彰日経BP社)

 

アフリカのざっくりとした理解を促しつつ、要所ごとに細かな具体例(特に取材地)を日本との関わりやビジネスチャンスも交えながらインタビュー形式で分かりやすく解説、と言った感じ

 

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Chapter1

人口10億超、かつ20代中心で今後も増加、手付かずのマーケット

資源大陸...鉱物、石油、天然ガス、地熱

農業・工業は未発達だが生産地としての余力

ヨーロッパから独立後、内戦も多く未だ政治的に不安定

内陸国16カ国、国単位では経済発展が困難

南北にも長く多様な気候により巨大農業が発展しにくい

援助より投資が求められる

中国の圧倒的存在感

アフリカ開発会議

 

Chapter2 物流インフラ

アフリカ面積>アメリカ+中国+ヨーロッパ+日本

16/54は内陸国、アフリカ人口の1/4、単独では海外貿易不可

鉄道は20世紀初頭の植民地時代のまま

圧倒的車社会だが未舗装道路によりかさむ物流コストと人件費

ランドクルーザーでも困難、おまけに通関でも長時間(cf. one stop border post)、時間がかかるというコスト

アフリカ域内貿易は12%程度、北米40%、ヨーロッパ63%

道路と並んで重要な港、内陸国は港を持つ隣国の状況に左右される

沿岸国と内陸国を結ぶ経済回廊

ケニア、モンバサ回廊、コンテナ拡張や周辺道路・橋整備で物流処理能力向上へ、経済特区

モザンビーク、北部ナカラ回廊、南部マプト回廊(to南ア)、アルミニウム加工のモザール社(オーストラリアから南アへ)

インド洋時代?

 

Chapter3 農業

主食のコメ、小麦、大豆、トウモロコシなどの大規模生産は未発達

南北に長く乾燥地帯が多い、多様な気候で同一品種の大量生産が困難、灌漑設備不足

輸入頼みで主食価格が割高だと労賃は安くても人件費が高くなり経済競争力が低くなる

人口増、食料不足?

穀物自給率ケニア58%、モザンビーク87%、75%以下も多数→物価高騰

耕作地は多いが肥料が使われず土壌肥沃度低下、土地を移す...焼畑農業

農業機械も遅れ

灌漑設備不足、資材調達や工事現場に困難など、使い方の習熟の重要性も(タンザニアでは人材育成に25年)、成功例の少ない協力事例

アフリカには簡単な土地整備で雨季に一作は確実にできる小規模な谷筋のような土地が多く残される

土地問題...所有は国や地方自治体だが使用権は個人、焼畑農業的な使い方のため不明確に

植民地時代の遺産の商業作物、カカオ、コーヒー、紅茶、パームヤシ、切り花(ケニア、SHEP)

農業国営化で人材育成や技術移転停滞、農地は増えるも単収増えず、生産性低下

アフリカ総面積30.37million km2、うち約8%の2.58 million km2(2.6億ha)が作付面積(日本の国土は38万km2、1/7)、30年で32%増加(世界平均7%)

2008の食糧価格高騰後アフリカ農業への投資、土地買収増加、多国籍種子会社や化学会社の参入も、Grow Africa投資フォーラム

CARD

ケニア山麓、ムエアで雨季には水稲インディカで乾季には陸稲ネリカ、二毛作に園芸作物も、7860ha→17000ha?、携帯でコメの売買(M-PESA、銀行口座やクレジット不要で国民の1/3利用)、精米は農業組合の半公営(集約・出荷も)と民間(個別・袋詰めまで、農家ブランド)、販路は個人商店やショッピングモール

ウガンダもコメ

モザンビークで日本ブラジルによるプロサバンナ(かつてセラードで成功した農地改革を)、トウモロコシと大豆(窒素固定、共生、耐乾性リスク分散)の生産拠点を、ナカラ回廊とも連携、大多数の小規模農家で土地取引が困難、小規模農家を束ねる集約農業とそれによる機械と肥料の導入

アメリカは遺伝子組み換えで圧倒的技術、中国は自国の開発経験と技術や品質を移転

 

Chapter4 電力

経済発展に欠かせないが普及しない電力

ケニアでも20%程度の普及率、1500MW、多くは不安定な水力(60%)

モザンビークでは都市部ですら毎日数時間の停電、ポータブルライト必須(かつてライト付き携帯流行る)

石油や石炭、天然ガスを購入できないエネルギー輸入国

エネルギー資源を自国の発電に使えないエネルギー産出国

地熱、大地溝帯(Great Rift Valley)、無尽蔵で安定でクリーン、発電所はいくつかであとは送電

cf.環太平洋火山地帯

地熱施設は日系3社で世界シェア7割

ケニア、オルカリア、2030までに10倍の電力供給?

 

Chapter5(+6) 消費市場

日系は資源・インフラ開発の商社・ゼネコン・重電などBtoBが主で消費市場は地の利の欧米、低コストの中韓

日本の売りは高い技術、BOP向け商品、CSR

e.g.サラヤの手洗いプロジェクト、トヨタの認定中古車制度(日本ブランド)と月賦販売(中間層獲得)

ウガンダのサトウキビでアルコール消毒剤?

悪路走破性がブランドに

日常課題解決で市場創造

雇用に欠かせない教育

 

 

 

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インタビューの形式上仕方ないのかもしれないけれど、重複が多くて全体の構造の把握しにくさは否めない。また同様に取材地の重点が置かれて偏り(ほぼ東〜南アフリカ)があるようにも思われる...が、やはり本書で言われるようにアフリカは多様でこれはきっかけに過ぎないというスタンスなのかな。

 

いくつか具体的にもっとその後の様子も知りたい項目(プロサバンナとか)はあったし、このレベルの具体性を持って、アフリカの各国の様子をもっと知っていきたい。

 

やっぱいずれは行かなくちゃね。

 

 

 

...プロサバンナ、農業開発の事例として気になったのだけれど

ググって割と上の方に出たのは小農の生活を破壊する〜みたいな記事。

どうにも土地の買収や使用に問題が起こっているそうな

そんな中で渡辺さんという方が活動していたらしく、以前のTICADでビザ問題が起きていた。

このビザの件、Facebookで見かけてこの実態までは知らずに署名してた、こんな形で再び見かけるとは...

技術的な問題とか、経済的に本当に小農の生活が破壊されるのか?ってところはこの記事からは全く分からないのだけれど

当事者の小農が開発策定に参加できず、土地所有権が侵害され、反対の声が受け入れられない公聴会がただ行われる、といったあたりに

開発のあり方が問われているような気がした。

まさにこれなんだよね、押し付けがましいっての。

多分進め方の問題で、プロジェクトのゴールそのものは懸念されている小農にとっても有益になり得るんだろうな...想像でしかないけど。

でも開発プロジェクトの都合(時間と資金とか数字とか)で、納得した形で進められてないんじゃないかな。

一方でその納得を本当に丁寧に得ようとしたらいつまでも進まないんだろうけど。

難しいところなんだろうな、このプロジェクトを中心に、色々アフリカの開発事例を見ていってみよう。