Sweet Brissie life

ブリスベンでのサトウキビ博士研究生活の甘くない備忘録

読了メモ「池上彰のアフリカビジネス入門」

池上彰のアフリカビジネス入門(池上彰日経BP社)

 

アフリカのざっくりとした理解を促しつつ、要所ごとに細かな具体例(特に取材地)を日本との関わりやビジネスチャンスも交えながらインタビュー形式で分かりやすく解説、と言った感じ

 

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Chapter1

人口10億超、かつ20代中心で今後も増加、手付かずのマーケット

資源大陸...鉱物、石油、天然ガス、地熱

農業・工業は未発達だが生産地としての余力

ヨーロッパから独立後、内戦も多く未だ政治的に不安定

内陸国16カ国、国単位では経済発展が困難

南北にも長く多様な気候により巨大農業が発展しにくい

援助より投資が求められる

中国の圧倒的存在感

アフリカ開発会議

 

Chapter2 物流インフラ

アフリカ面積>アメリカ+中国+ヨーロッパ+日本

16/54は内陸国、アフリカ人口の1/4、単独では海外貿易不可

鉄道は20世紀初頭の植民地時代のまま

圧倒的車社会だが未舗装道路によりかさむ物流コストと人件費

ランドクルーザーでも困難、おまけに通関でも長時間(cf. one stop border post)、時間がかかるというコスト

アフリカ域内貿易は12%程度、北米40%、ヨーロッパ63%

道路と並んで重要な港、内陸国は港を持つ隣国の状況に左右される

沿岸国と内陸国を結ぶ経済回廊

ケニア、モンバサ回廊、コンテナ拡張や周辺道路・橋整備で物流処理能力向上へ、経済特区

モザンビーク、北部ナカラ回廊、南部マプト回廊(to南ア)、アルミニウム加工のモザール社(オーストラリアから南アへ)

インド洋時代?

 

Chapter3 農業

主食のコメ、小麦、大豆、トウモロコシなどの大規模生産は未発達

南北に長く乾燥地帯が多い、多様な気候で同一品種の大量生産が困難、灌漑設備不足

輸入頼みで主食価格が割高だと労賃は安くても人件費が高くなり経済競争力が低くなる

人口増、食料不足?

穀物自給率ケニア58%、モザンビーク87%、75%以下も多数→物価高騰

耕作地は多いが肥料が使われず土壌肥沃度低下、土地を移す...焼畑農業

農業機械も遅れ

灌漑設備不足、資材調達や工事現場に困難など、使い方の習熟の重要性も(タンザニアでは人材育成に25年)、成功例の少ない協力事例

アフリカには簡単な土地整備で雨季に一作は確実にできる小規模な谷筋のような土地が多く残される

土地問題...所有は国や地方自治体だが使用権は個人、焼畑農業的な使い方のため不明確に

植民地時代の遺産の商業作物、カカオ、コーヒー、紅茶、パームヤシ、切り花(ケニア、SHEP)

農業国営化で人材育成や技術移転停滞、農地は増えるも単収増えず、生産性低下

アフリカ総面積30.37million km2、うち約8%の2.58 million km2(2.6億ha)が作付面積(日本の国土は38万km2、1/7)、30年で32%増加(世界平均7%)

2008の食糧価格高騰後アフリカ農業への投資、土地買収増加、多国籍種子会社や化学会社の参入も、Grow Africa投資フォーラム

CARD

ケニア山麓、ムエアで雨季には水稲インディカで乾季には陸稲ネリカ、二毛作に園芸作物も、7860ha→17000ha?、携帯でコメの売買(M-PESA、銀行口座やクレジット不要で国民の1/3利用)、精米は農業組合の半公営(集約・出荷も)と民間(個別・袋詰めまで、農家ブランド)、販路は個人商店やショッピングモール

ウガンダもコメ

モザンビークで日本ブラジルによるプロサバンナ(かつてセラードで成功した農地改革を)、トウモロコシと大豆(窒素固定、共生、耐乾性リスク分散)の生産拠点を、ナカラ回廊とも連携、大多数の小規模農家で土地取引が困難、小規模農家を束ねる集約農業とそれによる機械と肥料の導入

アメリカは遺伝子組み換えで圧倒的技術、中国は自国の開発経験と技術や品質を移転

 

Chapter4 電力

経済発展に欠かせないが普及しない電力

ケニアでも20%程度の普及率、1500MW、多くは不安定な水力(60%)

モザンビークでは都市部ですら毎日数時間の停電、ポータブルライト必須(かつてライト付き携帯流行る)

石油や石炭、天然ガスを購入できないエネルギー輸入国

エネルギー資源を自国の発電に使えないエネルギー産出国

地熱、大地溝帯(Great Rift Valley)、無尽蔵で安定でクリーン、発電所はいくつかであとは送電

cf.環太平洋火山地帯

地熱施設は日系3社で世界シェア7割

ケニア、オルカリア、2030までに10倍の電力供給?

 

Chapter5(+6) 消費市場

日系は資源・インフラ開発の商社・ゼネコン・重電などBtoBが主で消費市場は地の利の欧米、低コストの中韓

日本の売りは高い技術、BOP向け商品、CSR

e.g.サラヤの手洗いプロジェクト、トヨタの認定中古車制度(日本ブランド)と月賦販売(中間層獲得)

ウガンダのサトウキビでアルコール消毒剤?

悪路走破性がブランドに

日常課題解決で市場創造

雇用に欠かせない教育

 

 

 

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インタビューの形式上仕方ないのかもしれないけれど、重複が多くて全体の構造の把握しにくさは否めない。また同様に取材地の重点が置かれて偏り(ほぼ東〜南アフリカ)があるようにも思われる...が、やはり本書で言われるようにアフリカは多様でこれはきっかけに過ぎないというスタンスなのかな。

 

いくつか具体的にもっとその後の様子も知りたい項目(プロサバンナとか)はあったし、このレベルの具体性を持って、アフリカの各国の様子をもっと知っていきたい。

 

やっぱいずれは行かなくちゃね。

 

 

 

...プロサバンナ、農業開発の事例として気になったのだけれど

ググって割と上の方に出たのは小農の生活を破壊する〜みたいな記事。

どうにも土地の買収や使用に問題が起こっているそうな

そんな中で渡辺さんという方が活動していたらしく、以前のTICADでビザ問題が起きていた。

このビザの件、Facebookで見かけてこの実態までは知らずに署名してた、こんな形で再び見かけるとは...

技術的な問題とか、経済的に本当に小農の生活が破壊されるのか?ってところはこの記事からは全く分からないのだけれど

当事者の小農が開発策定に参加できず、土地所有権が侵害され、反対の声が受け入れられない公聴会がただ行われる、といったあたりに

開発のあり方が問われているような気がした。

まさにこれなんだよね、押し付けがましいっての。

多分進め方の問題で、プロジェクトのゴールそのものは懸念されている小農にとっても有益になり得るんだろうな...想像でしかないけど。

でも開発プロジェクトの都合(時間と資金とか数字とか)で、納得した形で進められてないんじゃないかな。

一方でその納得を本当に丁寧に得ようとしたらいつまでも進まないんだろうけど。

難しいところなんだろうな、このプロジェクトを中心に、色々アフリカの開発事例を見ていってみよう。

読了メモ「国際貢献のウソ」

国際貢献のウソ(伊勢崎賢治ちくまプリマー新書)

 

本人の経験が強く伝わってくる一方で、客観性や説得力・全体のまとまりなんかにはイマイチという印象...でも納得させられる部分も多数。

 

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*第1章 NGOという貧困ビジネス

NGOなどの国際協力は貧困を商品としたスキマ産業(ドナーと被援助国を三角関係で結ぶ)仲介する2者の距離が離れている必要があり、また貧困を根本的に無くす変革は目指さない

外国資本の公共事業としての開発

農業・教育・衛生など同時進行で複数のプロジェクトが動くコミュニティ総合開発、欧米のトップ国際NGOでは国連プロジェクト並みの金が動く

外国資本に賄賂漬けにされ資源が国益にならない貧国、ローカルシステムの成功を積んで国策に、他方で現地政府との折り合いやNGO間のテリトリー・自主規制

経費率を下げる、リストラできるマネージャーこそ求められる、現地に技術も人材もあって必要なのはシステムづくりや組織化、現場のヒーローとしての日本人に固執して駆逐される日本NGO

当事者の問題と距離を置いて客観的に戦略策定できる、外国の寄付者にコンタクトをとり橋渡しできる、それが部外者としての強み

日本に寄付文化は厳しいし国際NGOが既に独占、日本進出に元官僚を理事に据える外国籍NGO、日本NGOアカウンタビリティーよりアントレプレナー

 

 

*第2章 国際協力ボランティアという隠れ蓑

有難迷惑になり得るボランティア、近場で共感能力の発揮される距離感、いつでもやめて元の生活に戻れる形であるべき

善意に基づいても自発性や無償性を維持するには制度化が必要、税金であれば国策、国際協力を聖域にしたいお上の戦略として機能するボランティア

現場主義や技術専門家にこだわって採算性や援助効果が追及されないJICA

賃金をもらえる青年海外協力隊や、危険な現場に短期間かつ低予算で有能な人材を供給する国連ボランティア、真にボランティアではない

国連正職員と待遇格差のある国連ボランティア、それでも正規採用を目指し多数応募、職務以外の組織的な縛り

持続性のための組織化・制度化、従属、そして組織維持がミッションに並ぶ目的となるが、そこで職能や無償や漬貧のイメージで国家・寄付にすがってはだめ、貧困という商品開発(People Tree, Cause Related Marketing)、NGOこそ営利を目指せ

 

 

*第3章 国連というジレンマ

有事に個人ではなく組織全体で責任を取る、保身に走る本部と裁量のなくなっていく現場、ルールを順守し縛られていく官僚文化

 費用対効果を考えない官僚組織である国連、緊急性の高い戦後復興などではNGO無しで機能しない

パシリとなってしまうNGO、自身の財源もあり下請けにはならないNGO

NGOが有事の際に国連の指示に従うべきかは原理的問題、対等なパートナーとして活動すべき?そのためには民間資金は直接NGO

拒否権を持つ常任理事国既得権益、あるいは各国の国益とリスクしだいで硬直化する国連(e.g.ルワンダの虐殺)

正義を犠牲にして成立する平和(シエラレオネ内戦)、一貫性はなくテロリストは殺し方や数では決まらない

保護する責任も内政不干渉の原則と衝突

予防する責任は二国間援助や地域共同体による介入に可能性

 

 

*第4章 ODAという無担保ローン

国益ありき(日本人の信頼、日本製品の付け届け)、国益を通じて見る世界益

ただし相手国国民へであり、相手国政府への賄賂になってはならない、一部の政治家・政権への借りになれば足元を見られる(TICADでの国連理事会のためのロビー活動)

ODAは戦後賠償から始まり、減額の引け目から援助内容が被援助国次第の要請主義、2003年にODA大綱が見直されるも以前甘い日本の主体的判断、ODAによる被援助国の金銭的余裕が軍事転用される危険性、ODAを減額し質的改革を

利益直結でない教育なら無償、将来的輸出による利益を見込んだ農業・漁業やエネルギーなど大規模事業は有償、とはならず融資基準に一貫性がなく政治的な有償援助、聖域化により貸し倒れに甘い

国連拠出は分担金で十分、説明責任を逃れるための任意拠出金はやめるべき

国際連帯税導入 

 

 

*第5章 自衛隊憲法9条

軍隊の兵力は財政と仮想敵次第だが、仮想敵への抑止力という大義名分は政治利用されやすい

自衛隊海外派遣は現場の軍事的ニーズではなく国内政局への実績目的

国連軍事監視、非武装への国際貢献 

愛国心と世界平和のための国際協力は両立する 

 

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一般的にNGOやあるいは国際協力そのものに非営利的な慈善活動のようなイメージを持たれがちだが(著者に言わせればそういう自己主張の自業自得)、そこはビジネスと割り切って、公に利益も追及するように取り掛かって良いのではないか(国際協力業界の方々は百も承知で隠れ蓑にしてるのかもしれないけれど)。それが社会に認められ支援されるような活動・広報にシフトすべきなような。

 

国際協力がある種の貧困ビジネスであると割り切ってしまえば、手段の目的化(ミッションに並ぶ組織維持)問題、慈善事業的イメージと費用対効果への甘さ、名ばかりボランティアの立ち位置などって、バサバサ切れるんじゃない?要は世界の所得再分配装置としての役割なんじゃないかね。

 

似たように、愛国心国益)と国際協力(世界益)は両立する、という考え方は(自分が迷いなく国際協力に貢献するためにも)重要だと感じた。

人間も環境・自然界の一部であり、そのために環境保全や持続性を掲げて努力するように、国際社会というシステムの一部としてシステム内での優位性とシステムそのものの存続を両立させることは、きわめて理に適った大儀だろう。

純粋に貧困を憂う、貧者を救いたいという強い動機を持たない自分にとっても掲げやすく、また結果的に救われることを願う姿勢を貫ける大儀かもしれない。

読了メモ「なぜ貧しい国はなくならないのか」

なぜ貧しい国はなくならないのか(大塚啓二郎、日本経済新聞出版社)

 

開発の世界に関わっていくことを目指す自分にとって知らなかった知るべきこと、考えさせられることを多く含んだ一冊だった。

 

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*第1章 - 開発経済学とは*

開発途上国の貧困削減のための戦略を研究する学問

大半の開発経済学はミクロ経済

人生の質における一人当たり所得を挙げる重要性

所得と貧困

経済成長(所得上昇)と経済発展(経済の構造的変化)

 

*第2章 - 貧困は減っているか*

MDGs、中国の劇的な貧困削減、絶対数ではまだまだ減らない南アジア、むしろ増加するSSA

一人当たり所得=家計内労働者比率*労働報酬+一人当たり資産所得

生産年齢人口比率、人口成長3%/年で人口爆発、産業別就業者率、

農村と都市の貧困者比率、農村の貧困原因①土地の非所有②低教育水準③非農業就業機会の乏しさ、所得分配

 

*第3章 - なぜ貧困を撲滅できないのか*

時間と金のかかるストック蓄積による生産性向上が経済発展の肝、それぞれ補完的

①人的資本(教育など、最重要)

②物的資本(資本・労働比率増加の重要性)

③インフラ(費用があっても届かない、など)

社会関係資本(Social Capital、市場取引に重要)

⑤知的資本(科学的・技術的・経営的技術)

ODAは海外直接投資FDIに金額で大きく劣るが、市場の失敗しているインフラや教育などに用いられ発展を刺激することで民間投資を促進

優先度と順番のはっきりしない開発戦略、アジアで成功したがアフリカで成功していない緑の革命や工業化、雇用創出の少なく高度教育を要するため所得格差を生みかねないサービス産業

 

*第4章 - 飢餓は是が非でも避けたい*

AvailabilityとAccessibility、先進国と途上国の配分改善は理想だが非現実的で、貧困地域での安定的な食糧増産が基本方針

食糧不足、所得格差、自給率低下

耕地が膨大にあれば焼畑耕作だが有限下では肥沃度管理と生産性向上が必須

基本は小規模家族経営、賃金が高ければ機械化で労働力代替し大規模化、賃金上昇後も土地が狭く効率化が頭打ちになれば輸入増加へ、アジアが輸入に転じれば食糧価格高騰も

人口増で土地不足のアフリカ、アフリカで主要なトウモロコシと有望なコメ(灌漑設備、畔、平均化、近代品種、肥料)だが普及員不足

 

*第5章 - 東アジアから何を学ぶ*

協調と競争の国際経済、比較優位で分業されればよいが構造変化で競争に転じる、特に後発で途上国が追い付いてきた製造業は激しい国際競争

雇用吸収力が長期的にあまり変化しない製造業、消費増大をまかなう労働生産性の向上、ある国が工業化に成功すれば他国は既存工業の衰退あるいは工業化の失敗に、製造業発展が同時に生じ貧困者に雇用創出は困難

非熟練労働集約的な軽工業、資本集約的な重化学工業、知識集約的なICT、バイオ・ナノテク、だが発展と共に集約性がシフトし拠点が先進国から途上国へ

雁行形態論(Flying Geese Pattern)、資本に乏しい途上国が国際貿易で競争するには低コストを武器に非熟練労働集約的産業を発展させる、中進国なら物的資本、先進国なら人的・知的資本に特化

東アジアの成功:人的・知的資本に即効性のある海外からの学び、比較優位に従った発展、教育熱心で人的資本蓄積

アフリカ:技術ギャップを利用するシステムがない、直接投資や研修を呼び学び工業化、土台としてインフラなど最低限の生産環境

 

*第6章 - 途上国がしてはいけないこと*

架空の農業国の例:大半の国民が農業従事、比較的少ない耕作可能地と小規模経営、植民地化でプランテーション前近代的農業技術と低い生産性、ずさんな管理ではげ山状態の国有の山、都市への人口流入

①小作地の没収と移譲:家族などを所有者に加え名義上小規模化、小作人の追放、小作人をシーズン毎で変え移譲先を不明確に(小作人の投資意欲低下)、あふれる農業労働者は農業経営の力不足で生産性低下、所有権の強化は土地への投資に繋がる重要性、アフリカでは人口増による土地の希少化で自然発生、では累進的土地保有課税?

②機械化大規模農業支援:労働者管理の難しい途上国の農業にスケールメリットはない、単に小農に土地購買力がなく存続する生産性の低いプランテーション、だがインフラや加工との連携には存在意義、農家規模と生産性の逆相関、外資のアフリカでの土地買収の失敗、大型機械は土地の均一性や修理などの点で先進国に有利

③社会林業:過剰採取などの共有地の悲劇に対するかつての入会地、しかし森林管理のインセンティブ低下、高付加価値の木材生産性低下

④性急な重化学工業の促進:補助金による過度に資本集約的で不適正な技術採用、だが結局総費用はかさみ低持続性、安価な労働力を生かすべき

⑤大企業優先政策:丸抱えの内部生産は過剰設備などで非効率的、トヨタは大量の下請け、大企業は資金不足でなく投資補助は不要、必要なのは知識技術のスピルオーバー潜在的成長力を発揮できない資金制約のある企業

最低賃金の倍加:単なる最低賃金の増加は失業者の増加に(労働の需給均衡)、産業の発展による雇用創出とそれによる賃金増加(需要曲線の右シフト)が必要

 

*第7章 - 途上国が「豊か」になるためにすべきこと*

 農業開発:畜産・野菜・果樹・園芸などは小農主体よりも工業化戦略寄り、輸出向けの野菜や果物は商社が種子や肥料・技術指導を提供する契約栽培式、穀物生産こそ市場の失敗がより顕著、有望な作物選定が第一

工業化:中長期的成長力のある産業を育成、文化的・地理的に近い国で発展している産業の振興も見込み有

基本はターゲットの作物・産業の選定と市場の失敗に対応する資本蓄積を図る

社会関係資本:不正取引 → 農村共同体・産業集積の活用・支援・法整備

人的資本:投資資金借用困難 → 一般教育、研修・技術普及(スピルオーバー支援)

知的資本:情報の外部効果 → 研修・研究投資

インフラ:公共財ゆえの過少投資 → 公共投資、工業区や経済特区

物的資本:不完全情報(借り手の能力や行動) → 政策的信用供与

 

アフリカの農業開発戦略、技術体系の確立された水稲と未確立のトウモロコシ

①知的資本向上:技術移転・技術開発、風土に適した品種・栽培管理

②人的資本向上:栽培技術普及、普及員の不足が現状の制約、品種・肥料・畔・平均化

③インフラ整備:灌漑・運送・通信インフラ、改良品種普及が灌漑投資の収益率向上に

④物的資本充実:信用の供与と支援、新技術採用による現金支出増加、前貸し

 

製造業の発展戦略

産業集積による社会関係資本形成、知識のスピルオーバー、労働やサービスのAccessibility、革新の有無がわける停滞型と成長型

資金不足の中での輸入品の模倣からの始発期、創業者利潤と企業増加の量的拡大期、粗悪な大量の製品による値崩れによる採算性悪化、革新(質改善、ブランディングマーケティング労務管理など)による質的向上期、革新できない企業の撤退・吸収による企業数減少、産業全体の生産規模拡大による採算性向上

革新の促進:高水準の教育、外国企業での勤務経験、生産者組合の研修など

①人的・知的資本向上:研修と教育による海外技術・経営の導入、有望企業選定

②インフラ整備:工業区建設、集積強化、外資誘致

③物的資本充実:信用供与と支援

 

農業と製造業の発展戦略の類似性:知的・人的資本→インフラ→物的資本

相違:製造業は産業選択、長期的に学校教育がより重要、資金制約下では工業区振興

 

近代的サービス産業の発展

資本蓄積の制約や市場の失敗は比較的軽微で政府の役割も小さいが、英語や大学教育は重要、その収益率も増加中

ただし雇用が創出されるのは主に教育のある富裕層

 

農業国から工業国へ

農業の、前方連関(精米、運送、小売の発展)と後方連関(肥料、農薬、農業機械などへの需要増大)や農民の消費拡大による非農産業の発展への貢献

兼業所得や非農業への就職によるアジアでの貧困削減

発展の連鎖の数量的情報は未だ不足

 

*第8章 - 世界がもっと真剣に取り組むべきこと*

貧困削減と地球環境の保護の両立、SDGs、環境保護と平等による持続性

環境クズネッツカーブ:所得の増大と共に環境負荷がいったん増加するが、さらなる経済発展により意識や産業構造がシフトし汚染は減少する、逆U字カーブ、公害であれば実現しそうだが気候変動では当てにならない

原油価格とCO2排出量、エネルギー価格上昇がエネルギー節約を強く促す

気候変動の原因、温室効果ガス排出(2007):エネルギー63%(7割先進国)、農業15%(半分以上途上国)、森林減少11%(全て途上国)、工業7%(7割先進国)、廃棄物4%(半々)、世界全体で1990-2010でGHG50%増加、途上国は全体で40%の排出量、削減に差異はあれど途上国の参加も必須

気候変動の被害の75-80%は途上国(World Bank 2009)

Clean Development Mechanism(CDM):先進国による途上国でのGHGの排出削減は先進国分としてカウント 

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 開発の意義の中心は人生の質に直結する貧困を削減すること...苦しんでいる人たちを助ける、というのは立派なんだけれどまだここがスッと消化できずにいるんだよなあ。

 

貧困問題において途上国の農村の土地なし農民がメインターゲットで、教育と就業機会が脱出のポイントというのを再認識。これは一見農業を離れる、重要性を低めるようだがそのために農業開発が必要なんだよな。農業に縛られなくするということ。ここでは存在感薄かったけれど、人口の影響とその制御は開発においてもっと語られているはず。

 

資本の分類はよく整理されて助かった。ODAとFDIの関係性も。これらの包括的な戦略を意識したうえで自分の専門領域に貢献したいな。

 

食糧は分配より増産の問題という点は長らく気になっていたし、これまでの議論をもっとよく把握したい。小規模家族経営、大規模機械化、そして輸入増加、この流れの進行と要因もより深く理解すべきだろう。

 

大雑把にしか分かっていなかった世界での分業と産業構造の推移、雁行形態論を中心により具体的に理解できてよかった。だがこの推移の行きつく先はどこなのだろうか。後半で出てきた近代サービス産業による所得格差、また近年のAIによる仕事の代替などを考えれば、雇用は上位層に限られ縮小していく一方なのだろうか。

 

途上国の大規模農業は成功しないのか、もっと詳細な研究を知りたい。労働者管理は作業支援を兼ねながらドローンやGPSなどの技術で解決不可だろうか。あるいは大規模農業よりも、小規模農家の組織化に活路があるのか。一方で土地の所有権とそれによるインセンティブが生産性に欠かせないのは事実で、自分の今後の取り組みにも大きくかかわるだろう。

 

野菜・果樹などの作物が工業的というのは聞いていたし分かってきた、市場に任せにくい穀物こそ農業開発のカギというのも分かるのだが、それでも園芸作物への興味は捨てられないなぁ。工業寄りであっても開発が不要ではないのだし、いずれ機会があればこちらの領域にピボットしていくのも面白いだろうな。ターゲット作物、品種改良、栽培技術体系確立、技術普及、インフラ整備、物的資本充実という流れの戦略は納得できるし、こういうフレームワークを理解して個々の役割に徹するべきだろう。こうした戦略のCase Studyをもっとしていきたい。

 

環境の側面は他産業以上に農業と密接に関係しているし、気候変動に対応する技術開発は今後しばらく必要性が続くように思える。と、現在検討中の進路を正当化してみる。

 

さて、総括して斬新さはそれほどないが、よく体系化されていて自分にとって学びの多い一冊だった。ここでの全体像をもとに、各論や実例などについてもっと調べていきたい。やはり本当に開発に携わるなら、こうした議論を理解して自分の毎回の仕事の役割を分かったうえで働きたいと思う。

Vermeer

フェルメール展、いってきた。

芸術はド素人だけど、だからこそ時代や人物の背景や絵に込められた意味なんかを解説してくれる美術展は楽しめるなぁ。

 

牛乳を注ぐ女 (The Milkmaid)

女性の衣服の青黄赤の鮮やかな色彩、パンなどの静物の存在感、牛乳の注がれる一瞬を切り取った永遠感。込められた意味を調べたらWikiとかにも膨大に書かれていた。

 

リュート調弦する女(Woman with a Lute)、手紙を書く女(A Lady writing)、真珠の首飾りの女(Woman with a Pearl Necklace)

まとめたのはその共通点の黄色い上着が印象的だから。ラピスラズリによるフェルメールブルーが有名だけれど、黄色もとても鮮やか。そして3作品に同じ上着が描かれ、解説によると彼の財産目録に記されたものと同一とみられているらしい。しかも同時期の画家メツーの作品にも類似のものが登場している。こういう絵や画家を横断した存在感っておもしろいな。

 

赤い防止の娘 (Girl with the Red Hat)

カメラ・オブスクラ(写真機の原型)での写真に見られるようなぼやけ(ハレーション?)を再現したような描き方(by解説)。確かフェルメールは同郷の顕微鏡の父レーウェンフックとも親交があったそうな。彼の科学技術への関心がうかがえるし、それによって光の魔術師と言われるほどの光の表現が支えられているんじゃないかな。

 

全体的に、お馴染みの構図と光の表現はもちろん、線の表現による印象や配置されたものに込められた意味なども多く盛り込まれていて(ワイングラスや手紙を書く婦人と召使いなんかに見られる人物の表情、ステンドグラス、壁に飾られた絵など)深みを感じた。まぁ絵画って誰のものもそういうもんかね。

 

フェルメールの9作品は順路の最後、それまでは17世紀のオランダ絵画が並ぶ。

 

個人的には風景画、特に海の風景のものに惹かれたな。当時の航海技術の発展と関心が現れている気がして(まぁ、調べてみたら大航海時代も終わりの方だったようだけれど)。当時から慣れ親しまれたニシン漁の様子、逆に普段お目にかかれない捕鯨の様子を描いたものなど、それらが当時関心を集めていたんだろうな。

 

あとはハブリエル・メツー。フェルメールと同時期で影響もうけているとのことだったけど、構成だったり色遣いだったりとてもフェルメールに似ていた。それでもやはりフェルメールが圧倒的に評価されてるんだな...ただメツーのほうが作品(対象)は多様だったらしいから、機会があればもっとみてみたいな。

 

改めて、自分が美術鑑賞するときの焦点は、背景や意味に置かれているんだなぁ。やっぱり頭で鑑賞しがち。純粋に絵を観て受ける印象もあるはずだし、それに対する感性も磨いていきたい。どうするのか知らんけど。

 

にしてもさすがのフェルメール、やっぱり人気。

欲を言えばもう少し人の少ない状態で見に行きたかった。

読了メモ「転職の思考法」

後で更新予定

 

働いてもないのになんで転職の本なんだ、というとこだろうけど。パラパラめくってみたら共感するポイントがチラホラ出てきたので、全部読もうと買った。こういう形での共感って自分を正当化する感じで、やや気をつけちゃうけれどね。

 

選択肢を持たずしがみつくような在籍の仕方への警鐘あるいは嫌悪は全く同感だわ...まぁhowの部分にハードルがあるにせよ、ね。

 

やりたいこと(to do or being)、に関する部分は結構主観的な気がするけれど、ある程度納得させられる。まぁそもそも主観だもんな。自分で納得するしかないんだけど、でもその手助けになったように思えた。

 

実践的な部分への実感は限られているけど、それでも自分のケースに応用できそうに思える。

 

...業界の生産性に関してはどう考えても厳しいよなぁ。既存の老朽化したシステムに新技術と斬新なアイデアで誰も価値を見出せていなかったイノベーションを起こすしかないのか、なんと言うは易しか。

 

6 Nov 2018

まとめと再びの感想

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自分という商品のマーケットバリュー、これがないと会社依存に...業界一人当たり生産性、技術資産、人的資産、少なくとも2つ以上が高給与の条件

技術資産:専門性(職種に紐づく)と経験(チームを率いる、など)、他の会社でも発揮されるもの、20台は専門性(誰でも学べて差別化しにくい)30代以降は経験重視

福利厚生では会社の業績や転職次第でなくなるもの、自分のコントロール

人的資産:会社に依らず自分だから、という理由で仕事が引っ張ってこれる、助けてくれる、40代以降は特にそういう貸し借りで動いている

業界の生産性:現在の生産性そのものと、伸びているところ、仕事のライフサイクル...ニッチ→スター→ルーティン→消滅(機能ではなく人の分担)、代替可能性と雇用の数、マーケットが縮小していると競合も擦り減ってる、成長産業での経験そのものが資産

ピボット型キャリア、10年前と同じことをしている会社は成熟しきってるNG、ベンチャー参入で各社が伸びているサービス、既存業界の非効率を突くロジック、社会が見る価値の逆転 

会社選びの観点:マーケットバリュー、働きやすさ、活躍の可能性...自分の優先、論点を明確に

どんな人物を求め、どんな活躍を期待する?社内で最も活躍し評価されている人とは?なぜ活躍している?活躍している人の部署や担当業務の変遷

ベンチャーの見方:競合はどこか?競合も伸びているか?現場は優秀か(経営層優秀は当たり前、他は)?同業他社からの評判は(BSは当たり前だがそこに計上されない価値も多い、詳しい人やネット口コミで他社比較)?転職業者は高価、使うのはレファラルや直接応募で人が来ないとき、どんな人材でも回るビジネスモデルでは現場は使い捨てになり入社するなら上のポジションで

現場の人と直接話して質問し答えがきちんとしていればよい

エージェントの見方:好評価と懸念点の双方のフィードバック、案件ベースではなくキャリアへの価値の視点でのアドバイス、企業への回答期限延長や年収の交渉、他の求人案件への希望にも粘り強く付き合ってくれる、社長・役員などとのパイプがあり面接をセットできる

中途と新卒の待遇(活躍の重視)の違い、自分の職種と会社の強みの一致(核となる部署、組織があり商品やサービスの良さに現れる...e.g.品揃えなら渉外や店舗開発・営業、プロモならマーケや広告宣伝部、BtoBならコアメンバーの出身)

コストも違いポジションによって使い分けられる転職のチャンネル:ヘッドハンティング、転職エージェント、ダイレクトリクルーティング、SNSなどマッチング、直接応募か友人紹介

選択肢を持つ、ということ

なぜこれまで今の会社で働けたのか?何がそうさせたのか?

手段の目的化が問題の大半(会社の、ポジションのために仕事をするetc...)、うまくいっていない会社ほど視点が内向きでしがみつこうと不毛ないさかいが生まれる

転職後期に迷ったら当初の目的に立ち返ること、自分がいなくても会社は回る

マーケットバリューと給料は時間差で一致する

パートナーへの相談、共感できる文脈で説明すること、ロジック・共感・信頼、意思決定は誰より実態を知り誰よりコミットしている人間がすべきもの、だからパートナーも最後は信じるしかない

全ての人がやりがいを追い求めなければならないわけではない

一方でただ仕事するのはお金に買われているのと同じ、クリエイティブ要素のある仕事は安くても希望者が絶えないが、定型的事務作業は人気は少ないがゆえに高コスト、代替インパクトが高い

多くの人に本当に好きなものなと必要なく、心から楽しめる状態を求めている、それには「ある程度やりたいこと」で十分、上手と言われるが自分でピンと来ないもの・ストレスを感じないことなどは候補

状態は自分と環境、適切な強さ...自分のマーケットバリューと求められるパフォーマンスのつり合い、自分への信頼は自分を嫌いにならない選択肢を選ぶこと、緊張と緩和のバランス、緊張が社内と外部のいずれからもたらされるか?

自分にラベルを張りコモディティを脱却すること、それがより強固になるように仕事を選ぶ

やりたいことの種を見つけ始めたなら、殺さず、大きくしていくプロセスを大事に

失敗も最後成功すれば全ては必要だったといえるが、それでも腹をくくるべきタイミングで覚悟を決めきれなかったときは失敗

最終的に転職する優秀な奴はそれまでは一生懸命会社を担ぐ、一生会社にしがみつく奴は担ぐふりをしてぶら下がる、本当に担ぐなら数年でも御の字という考え方になるべき

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再度流し読みしてみて、以前思っていた以上に、思考法のHow to以上にその裏にある理念や随所に現れるメッセージの方に共感していたんだと再認識した。

まとめの後半の方はページ的には少ない方で、人生論的・主観的なものが多かったのだけれど、それでも納得することが多くて、ほとんどを書き残そうと思った。

これだけでも、一貫した形で自分の進路について多くのことを問えるフレームワークになっているし、これに沿って今の進路を問い直してみたい。

 

読了メモ「バッタを倒しにアフリカへ」

後で更新予定

 

農学(生物学)関連、研究者、アフリカ(途上国)、などなど自分と似たような部分があったからか吸い込まれるように読んだ。でもきっと、そういう境遇でなくても、あるいは違った方がより新鮮で魅力になるかもしれない。それくらい、強い引き込む力を感じたし、作中にもあるメディア露出の様子を読むからにも、きっと大勢を惹きつけてきたのだろう。

 

すごく見習って自分でも実現したいところ。今日たまたま参加したBBQでも、自分の身分ややっていることを自信持って引き込むようには話せなかったなぁ...。ウェイのコミュ力よりも(それはそれで強みになり得るけど)、そういう語る力がほしいね。

 

あとはやっぱり現地での人との関わり方かな。おれがコロンビアでやりきれなかったような部分に感じられた。

 

面白く、学ぶところの多い(と思われる)自伝だった。

 

6 Nov 2018

改めて、印象に残った部分を書き出してみる。

 

「バッタに食べられたい」のインパクト、ファーブルへのあこがれ

2倍の給料を出してでも、有能で信頼できるパートナーを雇う、一方でもめ事にならないよう所属機関を通すなど注意、技能のトレーニングと適性の見極め

観察→仮説→検証に必要なデータ→予想されるグラフ→論文のストーリー→実際にどうやってデータを取るか→実験スケジュール→仮説の合否によらず価値のある計画

実験室でもできることではなく現場の地の利を生かした研究、ローテク

人前で恥をかかせてはならない

所長との信頼関係

祝いは盛大に、プレゼントはお願いごとには必須、相手の心をつかむ

研究者の就職難、広報活動、自分の不幸も話のネタに

モーリタニアのお茶、砂糖・ミント・三度飲み

つらい時は自分より恵まれていない人を見て幸せをかみしめろ

執筆オファー...企画の面白さ、自分の本を読み覚えている、興味をそそるものも理解し用意している、相手を口説くために時間のかかる入念な準備を仕込み表に微塵も出さない