Sweet Brissie life

ブリスベンでのサトウキビ博士研究生活の甘くない備忘録

鑑賞メモ「Darkest hour」

ウィンストン・チャーチルの首相就任時のお話

 

彼のナチスドイツへの徹底抗戦姿勢、ヨーロッパ全土での絶望的状況、英国内部での政治争い、和平交渉との葛藤、ダイナモ作戦、国王や閣外議員・民衆の声、名演説...と言ったところだろうか。

 

歴史のお勉強が浅い自分には、当時のヨーロッパの状況もそうだったんだなぁという感覚。それほどまでにナチスドイツは強かったのか、という印象。またチャーチルは話はうまいが気性が荒く過去に軍事で失敗も多く支持が高いというより戦時首相という損な役回りを押し付けられたというのも知らなかった。

 

そんな中での徹底抗戦である。史実とはいえ映画なのでその絶望的状況はかなり演出されている、実際には勝算があっての姿勢だろうとは思うが、よくもあそこまで貫けるものだと思われてしまう。ジョークも上手く人を惹きつけられる話術や態度を持ちながら、ブレない姿勢を貫くことで人はついてくる、そんなリーダー像の一つなのかな。

 

ちなみに劇中ではチャーチルは過去に随分と失敗をしてきているようだし、結局今回の映画でもダイナモ作戦しか成功実績はない。後日の5年間で何を成し遂げたかも分からないが、最後は首相を降ろされる形になった様子。となると結局、話が上手くて周りを巻き込めた、というのが一番の魅力・実績だったということになる。

 

あと些細だが個人的に印象に残った、チャーチルが給油路を断てばよいとの指示に、部下が今は給油もガソリンスタンドでできるのですよ、と進言するシーン。トップが先端技術や現場の状況を把握せずに判断すると滅茶苦茶になりかねない、という教訓のように思われた。

 

そしてこれまた流行りに乗っかるようで嫌だけれど、ふと思ったのはもしこういう政治判断をAIに任せたとしたら、間違いなく和平交渉だったのだろう。それぞれの国益や損害、成功確率なんかをあらゆる可能性も含めて計算させたら、和平交渉で妥協になったのでは。それに近かった考え方がチャーチルの政敵だし、逆に国民(の描写の人たち)はそんな計算するでも実際の現地の状況を知るでもなく、徹底抗戦を選んでいた。改めて演出だとは断りながらも、合理的判断より希望的観測を多勢は求めたわけだ。AIがそういう感情的部分を加味できるのはいつになるだろうか、あるいはインプットを決めるものに依るのか、いやそうした感情に左右されないのがAIを使うそもそもの理由の一つか。

 

愚かさがドラマを生む。合理的だけの物語や人生では味気ない。そんな風に思った。