Sweet Brissie life

ブリスベンでのサトウキビ博士研究生活の甘くない備忘録

Bladerunnerを観てSF映画に思いを馳せる

SFの名作、Bladerunner (1982)を観て、面白かったので感想やSF映画について思わされたことを書き留めておこう。

Bladerunnerの近未来、人間の問い

Bladerunner、当時こそ映画のコンセプトや映像としても凄いインパクトだったのだろうな。これが40年近く前の映画だとは信じがたい。もちろんそれなりの時間経過ゆえに演出やファッションやらの古さは目立つんだけれど。

時間が経って今になって初めて観るのも、それはそれで別の面白さがあると思った。丁度舞台設定が2019なので、当時から見た今の未来予想ということになる。中核となる人間そっくりのアンドロイドの存在はもちろん、建物やモビリティなんかは実際の2019よりも遥かに進歩した世界だ。一方で、コンピュータとか、写真とかデバイスとかは今よりむしろ古くて、90年代程度のままになっている。

続編の2049も続けてみたけれど、デバイスやらは現代より大分進んだ世界を描いてる気がする。Joiなんかはその最たる例じゃないかな。それでもオフィスの概念とか、退廃した世界での雑多な街とか、かなり現状のまま。まぁ地球は崩壊が一層進んで、取り残された人々の場所って扱いだからとも取れるけれど。逆に本物の食材・動植物が非常に高価な世界というのも想像を掻き立てられるな。

そういう近未来の描き方はともかく、「共感や自我といた人間らしさとは、人間であるとは」などといった問題提起がストレートに示されていると思う。愛しあうことのできたDeckardとRachael、最後にはDeckardの命を助けたRoy、愛のために人の体を借り更に死の危険も自ら背負ったJoi、現実を突きつけられるも自己犠牲を選択したK。それぞれのキャラクターがそれぞれの形でその問に答えていたように思う。

そう遠くない未来に現実の人類もその問いに答えていかなくてはならない日が来る、そんなことを考えさせられる作品だった。

SF映画が見せる世界と示す問い

SF映画とはなんぞや、みたいなことも散々と語りつくされているんだろうけれど。そういう議論はあえて見ずに、自分の観てきた僅かな映画たちから考えたこと、自分自身の楽しみ方を。

Science Fictionていう名の通りで、注目した科学技術(往々にしてその時話題のもの)をデフォルメした世界を描くものだよね、SF映画って。「これが実現したらどんな世界になるだろうか」みたいな。その上で、人や人類はいったいどんな選択や行動をとるだろうか、みたいな問いかけをする。

まぁスターウォーズとかエイリアンとか、完全に異世界が主眼なのはまたSFの中でも別ジャンルのように感じるから置いておくとして。このあたりはアクションやホラー要素が主眼なのだろうし。

その想像した世界の描き方と、それによって強調される問いかけが、SF映画の要かなと思う。

SFといったらやっぱりまずは宇宙!Interstellar (2014)やMartian (2015)なんかは、リアリティにかなり比重が置かれている一方で、家族愛や困難に立ち向かう人間の力強さみたいなものが込められているように思う。宇宙と密接に絡むテーマでは、地球の危機がフォーカスされることも多いはず。Armageddon (1998)、The Core (2003)、The Day After Tomorrow (2004)などなど、環境問題への意識が伺える。Avatar(2009)みたいな、地球外生命体との邂逅では、人間の傲慢さと異なるもの同士での共存が浮き彫りになっていると思う。Arrival (2016)も似通ったところがあるかな、ヒューマンドラマに近い感覚もあるけれど。

個人的に宇宙・地球外生命体と双璧を成す科学技術の題材が、アンドロイド。有名どころはiRobot (2004)やEx Machina (2014)などかな、人間と機械との違いとは?ということが突き付けられる。人間とは、という問いに繋がる類似のものでは遺伝子工学か。今回のBladerunnerもレプリカント遺伝子工学の応用なんだよね。あとは遺伝子関係だとGattaca (1997)とかも思い浮かんだけど、まだ観てないし、あらすじ的には違うかな。これらハード面の技術に対してより知能・知性のソフト面では、近年の注目もあってAIなんかも頻繁に取り上げられてる。Her (2013)やTranscendence (2014)とか。あとはやや逸れるけど、Matrix (1999, 2003 & 2003)やReady player one (2018)のような電脳世界ものも、人の生き方への問いになっているように感じられる。これらの技術は進歩も目覚ましく実現に迫っているような印象もあり、人間とは何か?という古典的な問いや、人造人間や仮想世界は人類を幸福に導けるのか?という実現の是非を繰り返し突き付けているように思う。

かのホーキング博士なんかも実現性に否定的だったが、それでも時間をコントロールする、タイムスリップ系は尽きない。Butterfly effect (2004)や、ほぼアクションだけどLooper (2012)とか、過去を変えようとするがそう上手くはいかない、という展開は多い。本当に過去を書き換えるべきなのか?という問いから、意外と人間の内面的な部分に目を向けている気がする。タイムスリップではないが、設定は面白かったTime (2011)でも、時間は有限だからこそ意味がある、みたいなことが示されていたような気がする。

個人的に好きなのは記憶や心理の関連のSF、Eternal Sunshine of the Spotless Mind (2004)やInception (2010)みたいなやつ。アニメ映画のパプリカ(2006)も。人間の深層心理の描き方ってとても個性が出るところだし、そこに手を加えることが人生にどのような影響を及ぼすか、というのはとても面白いテーマだと思う。

おわりに

そんな感じで、実現した世界の描き方と浮き彫りになる問いの訴え方という切り口で観るとSF映画って面白いなぁ、という備忘録でした。

ちょっと番外だけれど、Bladerunnerの"Quite an experience to live in fear, isn't it? That's what it is to be a slave."というセリフは今日刺さり過ぎでしょ。