COVID-19 レポートまとめのまとめ
これまで一連のCOVID-19関連のコンサル各社のレポートたちを勝手に取り上げてきました。
それぞれただリンクを張って浅いコメントを残すだけの記事でしたけど、この横断記事ではもう少し見渡してみての気づきや考えを自分なりにまとめてみたいところです。
そもそもなんでレポートのまとめ
Withコロナ、Afterコロナなどの言葉が広まって久しく、いよいよ各国の規制も段階的な緩和に動き出しました。そんな中で、今後の世界はどうなるんだろうか、どのような対応が求められていくんだろうか、というのは誰もが気になっているところでしょう。自分も例外ではなく、現行の研究はあまり影響されないものの、その先のステップや並行してのプロジェクトのために、俯瞰的な理解を深めたいと思っています。
そのためにどんな情報にあたるのが良いかな、とぼんやり考えていた時にSNSで流れてきていたのがマッキンゼーなどのレポートでした。日々ニュースなどでも感染者数の推移や政治的動向は絶えず取り上げられていますし、実態の深刻さ・各々が取るべきアクション・できることなどはSNSでも広く呼びかけられています。そんな中で、そうした情報や世間の反応をまとめあげて、With/Afterコロナの世界とそこでの生存戦略を、各社コンサルが導き出そうとしている。そうした分析や考察はコンサルの十八番で、そして彼らのレポートなどからはその枠組みを学べるんじゃないか、という次第でした。新聞各社の論調比較してみよう、みたいなものですね。
こうして、(かなり浅い読み込みですが)レポートを横断的にまとめてみることで、With/Afterコロナの世界を俯瞰する視点を得ようと試みました。
各社レポートを横断しての比較
共通して見えた取り組みのフレームワーク
時間軸での3段階
感染者増加は避けられないが、医療崩壊はなんとか免れるためにピークを遅らせる、というのはここ数か月でしきりに主張されていたことだろう。現段階ではピークを越えたであろう状況の国が多くなり、規制も緩和され始めている。この段階を第一段階として、BCGのFlatten, Fight & Future、EYのNow, Next & Beyond、AccentureのNow, Next & Never Normalなど、時間軸で3段階にフェーズを区切り、それぞれにおいて適切なアクションを取ることを呼びかけていることが多い。McKinseyの5 HorizonsやDeloitteベンチャーサポートのWith・Postコロナ期にも似た発想が見て取れる。
シナリオベースの意思決定
疫学的・経済学対策の効果の2軸で9つのシナリオを挙げるMcKinseyや経済ダメージの深さ、回復までの期間、経済回復のパターンなどでシナリオを分けるBCGなど、あらゆるシナリオを想定しそれを1-2の主軸で区切ってアクションを取れるように準備しておくことが肝要。このアプローチの図解もMcKinseyのレポートにてシンプルによくまとまっている。
指標
上記のシナリオベースのアプローチにおいて、じゃあどんな軸や切り口をどうやって分岐してシナリオを想定していくのか、ということになる。そのために、McKinseyのCOVID Response Centre、KPMGのような国別にまとめられた政府の動向や経済指標、Bain & Company独自のTracking the Global Impact of the Coronavirus Outbreakなど、どこも何らかの指標を取り上げてモニタリングして意思決定に用いることを提唱している。
注力する領域
雇用体制やサプライチェーン、コスト管理などなどBCG, EY, Accentureらが提案する6-9の領域に見られるように、当然ながらどこも注力すべき領域を策定してそれぞれにおいて領域ごとに特化した対策の方向性を提唱している。このあたりで、今回注目されるようになったデジタル化、働き方、消費行動の変化などコロナ特有の側面が取り上げられ、いわゆるNew Normalへの予想などが盛り込まれている。
意思決定への組織編制
McKinseyのPlan Ahead/Immediate Response teamsやBCGのRapid Response and Transformation (RR&T) teamなど、今回のコロナからの回復に特化した組織編制への提言もみられる。
With/Afterコロナの世界
この辺りは外資コンサルのレポートよりも、DIのレポートの方が踏み込んでいたような気がする(単に外資の方の読み込みが浅いだけかな)。それでも出てくるキーワードは似たようなものだろう。全面的なデジタル化、働き方や業務連携の柔軟性、生産・消費過程におけるコンタクトレス、オンラインによる遠隔での営業・保守運用などなど。
本当はここに関してもっと情報収集して自分なりの考察をしたかったけどタイムアップ。それにコンサルレポートにあるようなのは大局観で、それが各現場にどう影響するか、みたいなのは個別の領域ごとに別途情報収集しなくちゃ、という印象。
各社に見られた違い
共通して見えたフレームワークって言っても正直McKinseyとBCGの枠組みがベースで、他社については特設ページで目を引いた部分をその枠組みに合わせて言及していたくらいだったりする。
自社でのアンケート調査などでの情報量、統計データなどの分析、その図示の量や分かりやすさも一見した限りでは二社がずば抜けている印象。
記事の量でも差がつく。McKinseyは記事数はすぐに見つからなかったが、BCGは150以上、DeloitteやBain & Companyも50以上はあるはず。それら以外は更新の頻度も解像度も下がってしまうように思われた。
McKinsey, BCG, PwC, EYなどはレポートだけでなく独自の診断ツールの提供などもしている。
McKinseyとBCGに肩入れしすぎなように思われるが、まぁやっぱりあれほどのサマリーレポートをきちんと構築してきてるのは、個別記事を掲載するだけとは気合の入り方が(そして割けるだけのリソースが)違うんだろう。ちゃんと全部読み込んてるわけではないので他社のは把握しきれてないだけかもしれないが、、、ぱっと見ではそのくらい差がついている。
その他の気づきや所感
Resilience
フレームワークとは別で、ページトップに挙がるキーワードとして、このResilienceが多くのコンサルのページで見受けられた。 "The capacity to recover quickly from difficulties; toughness." とあり、日本語では回復力・反発力なんかと訳される。ここ10年ほどでも多くの自然災害を経験した日本でもこの単語はよく使われていたように記憶している。
MCMC
シナリオドリブンの根本にあるのは、いわゆるMCMCに分けて考えようってやつで、多分これも今まで通りなんだろうな。今回はその切り口がコロナ関連の疫学的側面であったり、経済打撃の動向であったりする、というだけで。このような経済情勢をベースにしたアプローチはやはり戦略コンサルの性格や役割故なのだろうか。
デザイン性
コンサルのレポートやウェブサイトのデザインはやっぱりかっこいいな。自分も参考にしようと思う。
おわりに
当初の予定ではもっと考察したかったのだけど、残念ながらまとめをし始めたときから3週間も経ってしまい、世界の情勢も自分のモチベも変化してきてしまったのでここらで切り上げる。
それでも、今回のコロナショックに対しての戦略的な考え方の概要は掴めたんじゃないか(浅はか)。そして時間が空いて改めて見直しても、これらはResilienceのための枠組みであって、未来予想については控えめだな、と感じる。シナリオも復旧への見込みのパターンだし、指標もあくまで従来の経済指標や医療・政治的状況などのもの。もちろんただ復旧するのではなくNew normalに適応した再建を促して、キーワードを紹介してはいるけれど、そこに定量的な情報・予測は少ない。
上述のように自分の読み込みが浅いだけかもしれないが、いずれにせよAfterコロナの世界についてはもっと自分の関心領域において具体的に情報収集と考察しないとな、という感じでした。
時事ネタの考察、もっとテキパキやりたいけど大変だなぁ。